保管中の衣類の変色 昇華・湿気・ガスによる色の変化
しまっておいた服を久しぶりに出したら、色が移っていたり変わっていたりすることがあります。繊維製品の試験を行うボーケン品質評価機構は、染色やプリントのトラブルの事例を紹介する記事の中で、運ぶ間やしまっている間に起きる色の変化を取り上げています。ここでは、その記事(いずれも2026年10月13日に確認)をもとに、昇華、湿気、ガスという3つの原因と、記事が挙げる対策を整理します。記事はもともと作り手に向けたものなので、服を持つ側にかかわる点を中心に言い換えて紹介します。
高い温度で染料が気体になる「昇華」
2025年7月22日の記事によると、昇華とは固体が液体にならずにそのまま気体に変わることで、ポリエステルを染める分散染料のうち繊維に定着していないものなどが、高い温度の下で飛び散る現象を指します。衣料品では、濃い色と淡い色を切り替えた品や、下げ札などに染料が移ってしまうことをいうとしています。記事は、海外から生地や服を船で運ぶ間に、コンテナの中が長く高温になることで、昇華による色移りの危険が高まっていると説明しています。記事によると、東南アジアでの生産が増え、中国で作る場合よりも船のコンテナで運ぶ期間が長くなったことで、昇華による色移りも増えています。運ぶ間やしまう間に起きた例として、置いておいたら裾の黒いポリエステルの縫い糸の周りがピンク色になったことや、店に届いた品を開けるとポケットの淡い色の部分と下げ札に色が付いていたことが挙がっています。縫っている最中に手が黒くなったという例もあり、こうした例には、こすれに対する色の丈夫さが足りないことなどが原因になる場合もあると添えています。確かめる試験には JIS L 0854 があり、記事によると、白い布を付けた試料をステンレスの板に挟んで12.5kPaの圧力をかけ、120℃±2℃に保った乾燥機で80分間熱を加えたあとに判定します。防ぐ手立てとしては、染めたあとの還元洗浄を十分に行うこと、合う染料と染め方を選ぶこと、染色の工場で昇華の試験をして確かめることが挙がっていて、どれも作り手の側の対策です。
湿気で染料が外れる「色泣き」
2026年3月17日の記事は、買ったあとしまっておき、着る前に洗ったら、赤いプリントの水玉から色がにじみ出たという事例を紹介しています。原因は、プリントに使われた反応染料が加水分解を起こしていて、洗ったときの水で色がにじむ「色泣き」になったことだとしています。記事によると、反応染料の色泣きには大きく2つの原因があり、1つは染めたあとのソーピング(洗い)が足りず、繊維の上に定着していない染料が残っていることです。もう1つは、空気中の水分で繊維と染料の化学的な結びつきが切れてしまう加水分解で、こちらはソーピングをしても良くならないとしています。1つめは水や汗などの試験で前もって見当をつけられるのに対し、2つめは加水分解を見込んだ確認をしない限り予測しにくいと、記事は述べています。作り手に向けた対策としては、加水分解に強い反応染料を選ぶこと、染料に合ったフィックス剤(ぬれたときの色の丈夫さを高めるもの)を使うこと、色泣きの試験などで前もって生地を確かめることが挙がっています。あわせて、温度と湿度がともに高い場所での保管を避けることも挙げています。
しまっている間のガスや光による変色
2026年2月16日の記事は、クローゼットに置いていた服の色が変わった事例を挙げ、しまっている間に窒素酸化物(酸化窒素ガス)に強くさらされたことが原因だったとしています。対策には、高温多湿を避けてガスがたまらないよう換気することを挙げ、ナイロンの素材の一部には、ガスと反応して染料の構造が変わり、色が変わりやすいものがあると注意しています。同機構が示している、商品に付ける注意書きの例にも、アセテートやトリアセテートについて、石油ストーブを長く使う部屋や、車の排気ガスがたまりやすい場所に置かないよう求める言い方があります。同じ素材には、よく乾かしてから、湿気の多い場所を避けて、ポリエチレンの袋などに密閉してしまうよう求める例も並んでいます。光で色があせやすい物には、日光や蛍光灯の光が長く当たる所に置かないよう求める例があり、絹にも、光の当たらない場所にしまうよう求める例が挙がっています。
まとめ
紹介した記事によると、しまっている間の色の変化には、高い温度で染料が飛び移る昇華、湿気で染料が外れる加水分解、窒素酸化物のガスによる変色など、いくつかの原因があります。記事が挙げる対策の多くは作り手の側のものですが、温度と湿度の高い場所を避けることや、ガスがたまらないよう換気することは、しまう側にも関わる点です。手元の服の扱い方は、その服のタグや下げ札に添えられた注意書きも合わせて確かめてください。
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参考にした資料
各ページの内容は、2026年10月13日に確かめたものです。